平成22年度 九州地区 鶏病技術研修会

演題番号 7
ブロイラー農場に発生した鶏アデノウイルス感染症の2症例
1)大分県豊後大野家畜保健衛生所 2)大分県大分家畜保健衛生所
山本史子(ヤマモトフミコ)1)里秀樹(サトヒデキ)1)坂田真友子(サカタマユコ)2)山田美那子(ヤマダミナコ)2)

 県内2戸のブロイラー農場において、若齢ひなに鶏封入体肝炎(以下、IBH)、また筋胃びらんを主徴とする鶏アデノウイルス(以下、FAV)感染症の発生があったので報告する。

【症例1】A農場(40千羽規模、平飼開放鶏舎6棟)
➀発生状況等:2010年3月、20千羽導入。9日齢から死亡羽数が増加(1.2%→5.6%/週)。
➁材料:13日齢のひな9羽(剖検後、病理、細菌、ウイルスに3羽ずつ)、血清34検体を用いた。
➂剖検所見:肝臓の肥大、退色、出血、脆弱化が様々な状態で見られ(9/9)、1羽に心外膜炎が認められた。
➃ウイルス学的検査:肝からFAVを分離(3/3)し、血清型別と遺伝子系統樹解析を行った結果、血清型2型と判定。遺伝子検索では肝からFAVに特異的な遺伝子を検出(3/3)。環境材料では、一部の敷料からFAV遺伝子を検出。
➄細菌学的検査:心臓と肝臓から大腸菌を分離(1/3)。
➅病理学的検査では、核内封入体を伴う肝細胞の重度の変性壊死、脾臓の重度のリンパ球減少を観察 (3/3)。
➆診断名:IBH

【症例2】B農場(20千羽規模、平飼開放鶏舎1棟)
➀発生状況等:2010年10月、20千羽導入。2日齢から死亡羽数が増加し、7日齢までに1209羽が死亡・淘汰。
➁材 料:9日齢と17日齢の各2羽を用いた。
➂剖検所見:筋胃粘膜面に著しいびらんを確認。
➃ウイルス学的検査:筋胃(4/4)と肝臟(3/4)からFAVを分離し、遺伝子系統樹解析を行った結果、血清型1型に近縁であることが示された。遺伝子検索では筋胃、肝乳剤からFAVに特異的な遺伝子を検出(筋胃4/4、肝3/4)。
➄細菌学的検査:有意菌の分離なし。
➅病理学的検査では筋胃に好塩基性核内封入体を伴う筋胃びらんが観察され、筋層に単核系細胞の浸潤を確認(3/4)。
➆診断名:アデノウイルス性筋胃びらん

【まとめ及び考察】
 IBHと診断した症例1については、これまで国内に発生が見られなかった血清型2型のFAVが関与した症例であり、2009-10年にかけて全国的に発生している症例と類似していた。A農場においても、発生後に抗体保有率の上昇が見られ、分離株が新たに入ってきた可能性が示唆された。症例2の筋胃びらんは、2〜17日齢での発生で、発育遅延や死亡も認められたが、通常、FAVが関与する筋胃びらんは臨床症状を示さずに経過し、食鳥検査時に筋胃内出血、びらん・潰瘍により廃棄され発見に至ることが多い。導入後早期にFAVが感染して筋胃びらんを起こしても、出荷時には回復して気づかれない可能性もあり、著しい死亡の増加が見られなければ、家保への通報もなく、表面化しない例も多いのではないかと考えられた。今回、2症例とも定期的に立入を行っている農場で、死亡羽数が増加したために診断することができた。
 FAVは健康な鶏の呼吸器や腸管、あるいは環境中に常在していることが知られており、不顕性感染も多い。今回の2症例は若齢での発生であることから、移行抗体の有無や、輸送ストレス、環境要因等が重なり発症したものと考えられた。